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第50便 夢のつばさプロジェクト春キャンプ 岩手県遠野市・花巻市

復興
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春キャンプ開催に至った経緯と概要

夢のつばさプロジェクトはこれまでに東京で2度のキャンプを行ってきたが、かねてより子どもたちに近い距離での活動もしたいと考えていた。
夢のつばさ設立当時から協力していただいているてらこやネットワークの湯沢大地氏を中心に各方面にご相談を持ちかけていただき、
花巻青年会議所(以下、花巻JCと表記する)を中心とした、他の団体の方々と協力して事業を行うことが決まった。
1日目の牧場体験ではhandsやH.u.G.plat 遠野の方々の全面的協力をいただいた。キャンプ2日目の5月20日には花巻JCの55周年記念イベントに参加させていただき、
宇宙航空開発機構(JAXA)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の提供する科学体験をすることができた。
こうして設立当時から協力してきたてらこやネットワークの皆さまと花巻JCの皆さま、そして夢のつばさプロジェクトの主な3者の「共同プロジェクト」となった。

●主催
夢のつばさプロジェクト
●共催
NPO 法人全国てらこやネットワーク、
公益社団法人 花巻青年会議所

●企画・調整
室伏きみ子(お茶の水女子大学大学院教授、NPO 法人お茶の水学術事業会理事)
湯澤大地(NPO 法人全国てらこやネットワーク顧問)
上江洲 慎(NPO 法人全国てらこやネットワーク)
滝澤公子(NPO 法人遺伝カウンセリング・ジャパン理事)

●協賛
独立立行行政法人 宇宙航空開発機構(JAXA)
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
NPO法人hands
一般社団法人H.u.G.plat 遠野
社団法人 釜石青年会議所
桜蔭会岩手支部
国立大学法人 岩手大学

●特別協賛
株式会社ブリヂストン

ねらいと対象

今回のキャンプを開催するにあたり、以下の目標を立てていた。
・岩手県内で復興支援に取り組んでいる様々な団体と協力してキャンプを行うことで、復興に向けた多面的なアプローチを学ぶとともに今後に向けた協力関係を築く。
・現地の活動を通して被災地の実情を知り、求められている支援のかたちを調査する。

1点目については、花巻JCと共催し、H.u.G.plat 遠野やhands、岩手大学、釜石JCといった岩手県を拠点とする様々な団体とともに活動することができ、より大規模で活気のあるキャンプになった。
活動の中で現地の方ならではの貴重なご意見をたくさんいただくこともでき、今回のキャンプ運営で経験したことはすべて今後の活動に生かしたいと考えている。
多面的なアプローチに関してはH.u.G.plat 遠野やhandsとの共同企画である牧場体験を通して、今までの「学生対子ども」という関係を超えて「動物と子どもの交流」で子どもたちがどのような表情を見せるかを学ぶことを目標としていた。
今回訪れた青笹牧場を経営するH.u.G.plat 遠野は普段からホースセラピーをされており、私たちに今までなかったアプローチ方法に気付かされた。
また、現地で活動されている団体ということで、子どもたちとの距離感の取り方にも注目した。同じ県内で生活し、歳も近い岩手大学のみなさんや花巻UCのみなさんと子どもたちの交流には学ばされる点があった。

点目については、子どもたちの様々な発言に注目した。今回のキャンプ中、どんな企画を楽しいと感じるか、東京の学生に対してどういう印象を持つかなどの子どもたちの率直な意見を聞いた。
今までのキャンプでは子どもたちの地元から遠く離れた地でのキャンプであったため、子どもたちは学生に甘える場面が多かったのだが、
今回、子どもたちが暮らす地域でキャンプを行えば子どもたちがどのように学生を受け入れ、どのような接し方をするのか、とても興味を持っていた。
学生は今までのように保護者の元を離れた不安を和らげることもあるが、「東京からやってきたお兄さん・お姉さん」として子どもたちに何をしてあげられるか、何を教えてあげられるかを模索するよい機会であった。
また、日常生活に関する発言の端々に現れる震災に関することにも注意した。今までのキャンプでも子どもたちに見られる震災の影響はデータにまとめてきたが、今回は子どもたちが生活する地域でのキャンプということで、震災の経験が噴出しやすいと予想していた。
子どもたちの些細な反応にも気を配り、キャンプ後の反省会では学生全体で共有した。学生と子どもの交流以外にも、夢のつばさプロジェクトの室伏教授が宮城県からの参加者の保護者のもとを訪れお話を伺ってきた。
それによって今まで子どもたちを通してしかわからなかった彼らの家庭環境について知ることができた。私たちが子どもたちだけでなく、彼らの保護者に対しても何か力になれることはないか模索していきたい。

 


また、キャンプの参加対象については、今回は岩手県内の子どもたちに参加を募集した。
夢のつばさプロジェクトは今まで震災遺児・孤児を対象にキャンプを行ってきたが、今回はできるだけ多くの子どもたちに当プロジェクトのことを知ってほしかったため、参加者を遺児・孤児に限定しなかった。釜石JCの菊池理事長がキャンプ参加者募集のために教育委員会を訪問しキャンプ参加者募集に奔走してくださった。
そのおかげで岩手県釜石市と大槌町の小学校・中学校・高校にキャンプの案内を送ることができ、結果として岩手県内から総勢44名の子どもたちがキャンプに参加してくれ、中には震災遺児も数名含まれていた。
また、岩手県内の子どもたち以外に、宮城県在住の前回までのキャンプ参加者にも当キャンプのお知らせを送付し、5名が参加してくれた。宮城県からの参加者のように、今回参加してくれた子どもたちのなかの震災遺児・孤児に対しては継続的に連絡をとり、今後のキャンプへの参加も呼びかける予定である。
地理的な問題があり、毎日の生活をそばでサポートすることはできないが、方法を模索し、できる限りの支援を行っていきたい。

 

タイムスケジュール

キャンプ中、予想しなかった出来事等により、当初の予定通り、とはいかなかった箇所があったが、関係者各位の判断とフォローにより、大きく予定を変更することなくキャンプを終えることができた。

まず、ハプニングにより学生の到着が遅れてしまった。先に到着した子どもたちをバスで待たせることになってしまったが、その時間を利用して迎えに行った学生とバス内でレクリエーションをし、打ち解けることができた。
準備の方も、牧場の方々の全面的なご協力もあり、開会式は予定通りの時間に行うことができた。
牧場体験は青笹牧場にてH.u.G.plat 遠野の方々が「乗馬体験」や、「蹄鉄投げゲーム」、「餌やり体験」などを事前に企画・準備してくださっていた。当日も各企画にH.u.G.plat 遠野の方々やhandsの方がスタッフとして子どもたちの活動をサポートしてくださった。
子どもたち一人一人の興味・関心を優先し、当初の班行動を変更して、子どもに学生が1人以上一緒に行動することで個人行動にした。食事だけは班ごとにテーブルを囲み、学生と子どもとの交流や子供同士の交流を楽しんだ。体験プログラムを順調にこなすことができたため、今後のスケジュールを考えて30分早く牧場を出発した。
キャンプ場についてから、テント張りとカレー作りに分かれて活動した。前日が雨だったことで、テント張りを事前に行うことができず、夕食の会場設営の時間が押してしまった。さらに総勢120名分のカレー作りはこちらが想定していた以上の時間がかかり、予定より30分遅れての夕食となった。
しかし、テント張りでもカレー作りでもそのためキャンプファイヤーを30分短縮したが、その分濃密な時間を過ごすことができた。班対抗のレクレーションを行ったり、ギターの伴奏で「つばさをください」を歌ったりして子どもたちは楽しそうな様子であった。
その後、入浴時間を15分短縮したが、子どもたちも時間を守ろうと一生懸命頑張ってくれ、時間の遅れを取り戻すことができた。その結果子どもたちは予定通りの時間に就寝し、学生は班長らによるミーティングを行い、1日目を終了した。

2日目は花巻JC55周年記念イベントに参加させていただき、ほぼ予定通りに日程を終えることができた。予定より早く子どもたちを送り出したが、全員の保護者に無事お会いし送り届けることができた。

子どもたちの様子

春キャンプを行う上で、学生スタッフは以下3つの目標を持っていた。
①お友達をたくさんつくろう!
②興味を広げよう!
③集団行動を心がけよう!
今回の参加者は同じ小学校から友達同士で参加しているケースが多かった。しかし、せっかく集まった同年代のしかも同じ地域に住んでいる子どもたちなのだから、新しく友達を作ってほしいと考えていた。そのため、班分け等で可能な限り学校がばらばらになるよう工夫していた。
最初、バスで子どもたちを迎えに行った際はやはり同じ学校、同じクラスの友達と固まっていたが、牧場に着き、班行動になると、学生とも打ち解けてくれ、初対面の子どもたちとも仲良く活動に参加するようになった。ひとつ予想外だったのは、学年を超えての交流が盛んだったことである。
学年が近い子ども同士であれば自然と仲良くなってくれるだろうと期待していたが、今回のキャンプでは高学年の子どもたちが積極的に低学年の子どもたちのお世話をしたり、手伝ってあげたりする光景が見られた。

②の興味を広げようについては、牧場で馬の不思議について教えてもらったり、2日目の講演会で宇宙の神秘に触れたりする中で子供の好奇心が喚起された。そんな時に学生が「どうしてなんだろうね」と声をかけるなどして、その興味をその場限りのものにしてしまわないよう配慮した。
実際、牧場で馬のスケッチをしている時に「馬って優しい顔をしてるんだね」というような発言が見られ、学生が「そうだね。まつ毛も長いね。」と会話を膨らませていたし、乗馬体験についても、「馬って見ているよりよりも大きかった!それにすっごい揺れたよ。」という感想に牧場の方が説明を入れてくださっていた。
テント張りの場でも、子どもたちはテントを張るために使う様々な道具に興味津々で、道具の使い方や、釘を打つ角度などを学生に教えてもらいながら実践していた。
キャンプファイヤーでは薪を足すたびに大きくなる炎や舞い上がる火の粉に歓声を上げていたのが印象的だった。
2日目の講演会でも高学年の女子児童は「とても面白かった」と学生と講演内容について話している様子が見られた。講演会後のソーラーカー作りには多くの子どもが興味を示し、会場の前の公園で、日向を見つけては走らせたり、自分たちで影を作って止めたりと工夫して遊んでいた。
夢のつばさプロジェクトのキャンプでは普段子どもたちができないような体験をしてもらいたいと考えており、今後のキャンプでも子供の興味関心に敏感になる、という心掛けは継続していくべきだろう。

③の集団行動に関しては参加人数が多いということで、きちんと時間通りに行動するよう子どもたちに伝えていた。全体での集団行動は人数が多すぎて難しい面もあったが、班内での集団行動はよくできていた。スケジュールの決まっている企画でも子どもたちは素直に遊びを切り上げ、次の企画に移ってくれた。
企画以外の時間にも班内での交流は盛んであった。特にバス移動の時間は子どもたちにとってはかなり自由に学生とも他の参加者とも交流できる貴重な機会だったようだ。
バス内では班ごとに固まって座ってもらっていたのだが、そこで記録係の学生のカメラを借りて友達や学生の写真を撮ったり、しりとりをしたり、とてもリラックスしながら班内での交流を楽しんでいるように感じた。こういった時間の中で学生に心を開いてくれたようにも思う。
このように全体的に班での交流は盛んだったのだが、子どもたちのなかで男女間の交流がなかったのが心残りである。次回以降は学生がより促すべきだろう。

キャンプ全体を通しては、子どもたちは満足して帰ってくれたようだ。閉会式で泣き出す子どもたちが数名いたし、バスでご家族のもとへ送り届けたときにも、まだ帰りたくないと訴える子供もいた。子どもたちがこのような反応を見せてくれたのは、学生一人一人が子どもたちに真剣に向き合った結果であると考えている。
一緒に遊びながらも、何かあれば寄り添ってあげる、話を聞いてあげる、そのような接し方を学生は意識してきたが、春キャンプでの子どもたちの様子をみるとこの方法を今後も続けていきたいと思う。
また、子どもたちの災害に対する反応として以下のようなものが見られた。
【仮設住宅について】
キャンプ参加者には仮設住宅で暮らす子どもも多かった。彼らは、学生にふと「今仮設住宅に住んでるんだ。」と言ったり、「仮設住宅ってすごく狭いんだよ。」「仮設住宅もキャンプ場と同じくらい暗い。」と具体的に話し始めたりした。
中には、仮設住宅に移った日、ご飯にソースをかけただけの夕食だったことを話す子どもや、仮設住宅だから住所を書きたくないという子どももいた。
【津波に関して】
岩手でのキャンプということで、子どもたちはバス移動中、外の景色を見ながら普段の生活のことを話してくれた。そういった会話で、「前の家の近くには神社があったんだけど、流されちゃった」と、以前住んでいた家の話が出たり、公園の遊具が流されて遊べないという話がでたりした。
また、津波で家族が流された話をする子供もいた。

学生はキャンプ前に心理カウンセラーの方の講演を聞き、子どもたちから震災関係の話を持ちかけられたとき、どうすればいいかを学んでキャンプに臨んでいる。そこでは「受容と共感」が大切だと説かれ、
どう反応したらいいかわからない発言にも否定をしたり、話をそらしたりするのではなく、「そっか」と受容し、「つらかったんだね」「かなしかったね」と子どもの気持ちに共感するよう指導を受けた。
しかし、実際に上記のような発言を聞くと、「そっか」と受容し、「大変だったね」「つらかったね」と声をかけても、それからどうすればいいかわからず、困惑してしまった学生も多数いた。
夢のつばさは長期的な支援を目的としている。そのためには子どもたちの震災経験をどう受け止めていくかは避けては通れない課題である。今回得た経験をさらに学生間で議論し、心理カウンセラーの助言ももらいながらよりよい方法を考えていきたい。

結果報告

このキャンプを通して現地の方々にもっと夢のつばさプロジェクトの活動を知っていただくのが一つの大きな目的であった。知っていただき、より多くの震災遺児・孤児たちの支援活動につなげたいと考えていた。
そういう意味では地元新聞、地元テレビ、NHK等々のメディアに取り上げていただけたことは大きな成果だったと言える。
さらに、今回のキャンプ参加者が50人超ということで、彼らのネットワークを生かした宣伝効果も大いに期待できる。子どもたちのお迎え・お見送りに同行した学生の感覚としては地域付き合い、親戚付きあいが濃密そうであったことから、参加者の親戚の中に遺児・孤児がいた場合には、今後のキャンプに参加してくれる可能性もあるだろうと期待している。今回キャンプ参加者の遺児・孤児に対しては今夏のキャンプの案内を送る予定である。
また、今回多くの団体と協力させていただくことで、子どもたちへのサポートの方法、イベントの運営など多くのことを学ばせていただいた。地元で活躍なさっているからこそのご意見や子供との関係性など、今までのキャンプではわからなかったことを吸収することができた。
子どもたちも閉会式や、最後のお別れのときに「まだ帰りたくない」と泣き出した子が何人もおり、キャンプに満足してくれていたように。

次回のキャンプへの課題

①現地の人の生の声を活かしたキャンプ
今回のキャンプでは今までになく現地の方々と交流し、貴重なご意見をいただくことができた。それは協力団体のみなさまからのアドバイスであったり、保護者の方々からの聞き取りであったり、子どもたちからの率直な意見である。ただ子どもたちが楽しんでくれるキャンプで終わらせるのではなく、保護者の方々が望んでいることや現地の皆様からのアドバイスなどを織り込んだキャンプにしていきたい。
とくに、夢のつばさプロジェクトは子どもたちが普段できないような活動をキャンプで行いたいと考えている。年齢が近い学生だからこそできること、東京で活動しているからこそできること、様々な大学からボランティアが集まっているからこそできることなど夢のつばさプロジェクトならではの活動を見直し、「普段できない活動」の内容を吟味していくつもりだ。
ただそれだけで終わるのではなく、今回得た現地の方々の声を反映させられるようにも努力したい。

②春キャンプ参加者のケア
閉会式のときに何人も涙を流しながら「まだ一緒に遊びたい」、「帰りたくない」と言ってくれた子どもたちを見ると、今回の参加者は本当に満足してキャンプを終えてくれたようだった。春キャンプ終了直後は、現地での活動の予定はたっていなかったのだが、彼らとの関係を終わりにしたくないという思いもあり、彼らに対するケアを考える必要性が出てきた。
震災の話が多くの子どもたちから聞かれたように、被災経験をしていない学生に話すことで子どもたちの中でなにか変化があったかもしれないし、まだまだ話したいことをたくさん抱えている子供もいることだろう。ただつらい経験を誰かに話したいだけ、という子どももいるかもしれない。
そういった心のもやもやを抱えた時に、彼らと日常的に会うことのできない東京の学生にだからこそ話せる、甘えられる、わがままが言える、という子供は多いだろう。そういった子どもたちの期待にどう応えていくかは大きな問である。しかしそれだけではなく、春キャンプを通してせっかくできた新しい友達との関係も維持してもらいたいと考えている。
それはキャンプの目標に友達をたくさん作ろうと掲げた責任でもあるだろう。参加者の多くは仮設住宅に住んでいる子どもたちで、仮設住宅間では運動会などで交流の機会があると伺ったが、仮設住宅以外に住んでいる子どもたちとの関係はますます希薄になってしまうのではないかと心配している。
また、保護者の方からも、仮設住宅には子供がいるご家庭が少なく、今回のキャンプのように大勢で遊ぶ、という機会が少ないというお話を伺った。そういった点からも、今後、彼らに対してどのようなケアができるかが課題である。

学生の感想

【女子学生K】
今回現地に初めて訪れたこともあり、子どもたちが普段どのような場所で生活しているのか見られたことが貴重な体験でした。瓦礫の山や、再建されていない家々を見ながらバスで学校に通っているのかと思うと、私たちは彼らに何ができるのか、もう一度考え直さなければいけないと感じました。
全体としては子どもたちの人数が多い分、大変ではありましたが活気がありとても楽しかったです。
【女子学生K】
春キャンプを終えてみて、反省するべき点もたくさんありましたが素直な感想としてとても楽しいキャンプでした。今回はゆめのつばさプロジェクトとして初の被災地である現地キャンプということで勝手もわからず正直不安な面もありました。私たちはいったい何が出来るのだろうかと何回も話し合いました。
しかしいざ当日になり現地へ行ってみると生き生きとした子どもたちが待っていました。そして現地の方々の優しさに触れ、あっという間の素敵な2日間を過ごすことが出来ました。
また現地だからこそ目の当たりにした光景もありました。それはがれきのつまれた街へ帰っていく子どもたちの姿です。本当になんともいえない気持ちになりましたが、無力さを感じるとともに自分たちに出来ることに最善を尽くそうと決心しました。
学生と子どもが一緒になって思いっきり楽しむ。すると自然に笑顔が広がっていく。これからもこのような笑顔の連鎖に少しでも関わっていけたらと思います。

【代表田中】
2012年5月19日・20日に行なわれた春キャンプは、「夢のつばさ❤プロジェクト」三度目のキャンプにして初めての東北開催となりました。今回は、特に保護者を亡くした子どもたちに限らず呼びかけたこともあって、過去最多の49人の子ども達が参加してくれました。スタッフ含め約120人もの大規模開催となりましたが、賑やかで楽しい2日間を過ごすことができました。
今回は東京から離れた地での開催でしたので、準備はこれまでよりも難しかったです。実際に現地へ下見に行き、また、現地の方々と何度もやりとりさせて頂きながら準備を進めました。また心理カウンセラーの方を招いて被災した子ども達の心のケアについて学び、責任を持って子ども達と向き合えるような準備もしました。
このようにして迎えたキャンプ当日、まずは青笹牧場にて乗馬体験をしたり、馬にエサをあげたりしました。馬と初めて触れ合う子どもも多く「馬ってこんなに大きいんだね」「最初は怖かったけど、すごく可愛いかった!」などと目を輝かせていました。
宿泊地であるキャンプ場では、テント張りやカレー作りを協力しながら行なうことで、参加者同士がより仲良くなることができました。キャンプファイアーも盛り上がり、「つばさを下さい」を全員で歌ったときの一体感は素晴らしかったです。
二日目は「夢のつばさ❤プロジェクト」と花巻青年会議所の共催で実施された科学イベントに参加しました。はやぶさプロジェクトリーダーであるJAXAの川口淳一郎先生のお話しを聴いたり、宇宙服を着てみたり、NEDOの皆さんのご協力によるソーラーカーの模型作りをしたりと、楽しいコンテンツが盛りだくさんで、子ども達だけでなく学生も大いに楽しみました。お昼以降は公園で自由に遊び、最後は閉会式でお別れの挨拶と歌を歌って、キャンプが終了しました。
2日間はとても短い時間でしたが、子ども達と一緒に充実した時間を過ごすことができました。到着当初は恥ずかしがって同じ学校の友達とばかり話していた子ども達も、班に分かれて様々な体験をしていく中で、新たな友達をつくり、学生スタッフにも心を開いてくれました。キャンプの最後に、別れを惜しんで涙を流す子ども達もいて、それほどまでにキャンプを楽しんでくれたこと、私たちとの時間を大切に思ってくれたことが嬉しくて、別れが一層辛くなりました。たった二日間でしたが、子ども達にとってこの春キャンプが忘れられないの思い出となってくれれば嬉しいです。
今回のキャンプは多くの方々のご協力があってこそ実現できました。特に花巻青年会議所の皆さまは企画・準備段階のみならず、当日のお手伝いまでして下さいました。岩手大学と鎌倉てらこやの学生さんと、花巻UCの高校生がスタッフとして参加してくれました。それぞれが持ち味を生かしてキャンプをより一層盛り上げてくれ、子ども達を楽しませてくれました。他にもhandsの皆さま、H.u.G.plat 遠野の皆さま、桜蔭会の皆さま、温かいご支援をありがとうございました。
私事ですが、今回のキャンプはリーダーとして参加した初めてのキャンプでした。リーダーという役割を果たして行く中で、多くのことを学ばせて頂きました。辛いと思う場面もありましたが、温かく見守り、支えて下さった皆さまのおかげで乗り越えることができました。本当にありがとうございました。今後も被災地の子ども達のために、できる限りのお手伝いをしていきたいと思っています。