不登校・引きこもり・いじめ…現代の教育の問題は深刻さを増しています。その現状に心痛めない人は少ないでしょう。我々は、これらの要因は、問題が顕在化した子どもたちだけではなく、健常と呼ばれている子どもたちの中にも潜んでいるものと考えています。我々はこのような状況を「地域教育の再興」によって打開しようと、現代版「てらこや」を全国各地に設立してきました。かつて、地域社会は、子どもたちが群れをなし、おもいっきり遊び、集団行動の中で自治を覚える時間・空間・仲間に溢れていました。そして、子どもたちに過剰に干渉することなく、彼らを温かく見守り、時には厳しく叱る青年組があり、自律した人格と慈悲の眼を持った大人たちの存在がありました。我々はかつての地域社会に存在した、世代を超えた重層的な人の和による教育を日本の民俗に習い「複眼の教育」と呼んでいます。そんな「複眼の教育」を全国各地の青年会議所のメンバー・大学生・市民ボランティアのコラボレーションによって再生するのが現代版「てらこや」なのです。
2003年に鎌倉に創設されたのをかわきりに、広島県宮島、群馬県伊勢崎、埼玉県朝霞、愛知県豊田、新潟県南魚沼、燕三条、大阪府泉大津、沖縄県浦添などの地域で次々に設立され、現在全国約20箇所で立ち上げられるに至りました。そんな全国各地の「てらこや」を有機的に結ぶための組織が「全国てらこやネットワーク」です。教育理念と実践を共有し、全国の子どもたちの交流を促進する事業を行い、その成果を全国的に発信していきます。
子どもたちが一人前に育つには、信頼しうる人、あこがれとなる人との出会いや、いきいきと今を生きる感動体験が必要です。一人前とは、自ら感じ考え判断して、求められれば社会のために働くことのできる人です。地域社会の歴史・伝統・自然をいかした様々な活動を通して、同じ釜の飯を食べ、共に汗を流し、泣き、笑い、歌い、踊り、学び、気づき、葛藤する中で子どもたちは、良き仲間を作り、あこがれとなるお兄さんやお姉さん、信頼できるおじちゃん、おばちゃんと出会います。子どもたちは、そんな感動体験を通して、自ら主体的に生きる力、地域への愛着を自然と身につけていくでしょう。そのために我々大人は、自律した存在へと自らを育てなくてはなりません。そう、子どもたちの存在が我々の成長を促してくれます。自然と関わり、人と関わり、社会と関わる活動を通して、大人も若者も子どもも共に育つ。そんな感性溢れる地域を全国各地につくります。
そして、おなじ「てらこや」を志す地域同士が、各地の特色を活かしながら協働・交流することによって、相互に支えあうネットワークをつくります。他を知り己を知ることで地域社会のもつ固有性を実感し、日本の多様性を体現することができるでしょう。多くの子どもたちにそんな体験をさせてあげることができたら、暗雲たる現代日本の教育に一筋の光を射すことができるものと信じています。
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